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仕事ものがたり

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窓を拭く姿を、遠くのビルから見てくれた人とは。

大学を卒業したばかりの青年・藤井は、東京・銀座にある証券会社に勤務していた。有名な寿司店のある数寄屋橋のビルの一階で、やるべき仕事が見つからずに悩んでいた時、思い立ってオフィスの窓ガラスを拭くことにしたという。上司に指示されたわけではなく、毎朝、出勤したら窓ガラスを丁寧に拭く。ただそれだけのことだが、毎日続けるということは並大抵の精神力ではないはずだ。

ある日、一本の電話が鳴る。藤井が窓を拭いていたビルのちょうど対面のビルの上階に会社を構える経営者だった。「毎朝窓の掃除をしている青年と話したい」とその人は告げた。藤井が窓を拭く姿に感心し、毎朝その風景を眺めていたのだそうだ。そしてその人は、藤井にとって大口の顧客となるのである。

毎日欠かさず続けるということ、それは必ず誰かが見ていてくれる、と藤井は懐かしそうに話す。