シー・クエンス
仕事ものがたり

梅から桜へ、そして新緑へ
3月の終わりごろから、桜前線がNHKのニュースになることが当たり前になっているが、世界中をみても、開花がこれほどまでに話題になる国はそうそうないだろう。今年は何回お花見をしたか、とか、どこそこでお花見を楽しんだという話題が、季節の挨拶のようになっており、日本人がこれほどまで桜を愛でる国民なのかと毎年感慨深く思っている。そもそも平安時代の花見は梅を見ることだった。それが江戸時代あたりから、品種改良が成功したソメイヨシノが全国で栽培されるようになり、お花見は桜が主役へと移り変わっていったのである。その桜も名古屋を中心にした中部地域では散り際を迎えており、同時に葉桜が出始めている。
梅は蕾がふくらんだころが、桜は花びらが風に吹かれて舞う散り際が美しいなどという人が多いが、もしかすると日本人の死生観と桜には深い関係があるのではなかろうか。かの西行法師も「ねがわくば桜のもとで春死なむ」と詠んでいる。毎年この季節になると、そんなことを思いながら桜の花見を、そして次の生命の源でもある新緑を眺めて独りごちている。