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母の誕生日祝いができる幸せ

「母が、またひとつ歳を重ねることができました」と藤井は嬉しそうに話す。母子家庭で育った藤井にとって、母は、母であり父でもあった。厳しいしつけをされ、普通なら父親が教育するべき事柄を、母は息子に説いた。父親の役も果たさなければならない状況に、もしかしたら母は心の中で孤独を感じていたかもしれない。でも、そんなそぶりは一切見せずに、息子にさびしさを感じさせることなく、堂々と子育てをしてくれた。おかげで、藤井少年は大地を駆け巡り、山を走り、川を泳ぐ、子どもらしい少年時代をのびやかに過ごすことができたのだ。 今年で母は90歳。大きな病もなく、健康で元気に暮らしてくれている。誕生に当日には、恒例の食事をし、息子や孫と語り合う時間を楽しんでくれた。これまた恒例のお説教の時間もあった(苦笑)。還暦を過ぎた藤井にとって、これ以上の幸せな時間はほかにないのではないか。言葉には出さなかったが、育ててくれてありがとう、と心の中で何度も何度も感謝の念を思ったのである。